「そうですか?ぼくにとっては当たり前の事ですけど」

この1年以上ほとんど一緒に暮らして来たようなものだから、アスター王子を嫌でも理解できるのは当然と言えるけれども。アスター王子は実感が籠もった声でつぶやく。

「……大抵の貴族女性は、見た目と地位だけでオレに近づいて来たからな……」
「まあ、そうでしょうね。あなたは見た目は完璧ですからねー」
「は?」
「令嬢に変態癖を知られてドン引きされたり、逃げられたんじゃないんですか?」
「違う!それ以前の問題だ」
「はぁ、じゃあ令嬢の親に変態を知られて破談されたとか」
「だから違う!縁談はすべて断ってきた」
「でしょうね〜田舎にいて情報に疎いぼくさえ、あなたが“女嫌い”だとか“同性が趣味”とか言う噂を聴いた事がありますから」
「……それは事実ではないぞ?」
「はい、今はわかってますって。美少年を侍らかしてませんからね」
「だから、違う!」

結局、いつもどおりのやり取りに落ち着いてしまう。でも、不思議と胸がざわついてた。

アスター王子が珍しく昔の女性関係(?)について話している。縁談はすべて断ってきたと言いながら、本当は好きな人がいたんだ……なんて告白をされないか…とか、なぜか内心気にしてしまっていた。