「婚約者……」
オウム返しのように呟いたアスター王子にズイッと身体を近づけると、さらに追加で言っておく。
「はい、わたしはあなたの婚約者です。これから長い人生をあなたとともに歩む覚悟ができたから、この婚約を自分の意志で受け入れたのですよ?ですから、こんなふうにうやむやなまま、流されるようになにかを進められるのは不本意です。
もしもなにかしたいことや希望があれば、直接わたしにおっしゃってください。もちろん、わたしも自分自身の意志で決めさせていただきますが」
逃さないために顔も近づけてじっと見上げていると、アスター王子は突然顔を片手で覆ってしまいましたよ。
指の隙間から見える顔は、なぜか赤く染まっている。
「……いきなりそれとか、反則だろう。心臓に悪い」
なにやら、ぶつぶつ独り言を呟いてますが……。心臓が!?それが事実ならばとんでもない事だ。
「アスター王子、心臓が悪いんですか!?なら、こんな場所にいないですぐ部屋に帰って横になってください!お医者様が必要なら呼びますから」
「ち、違う!オレは健康だ!!」
「でも、心臓が悪いとかおっしゃってたじゃないですか?」
「そ、それはもののたとえだ!」
「たとえ?一体なんのですか?」



