「ミリュエール様、全身をマッサージいたしますわ。それからまた温泉に浸かりましょう」
なぜかマイルさんが制服を腕まくりしてそう言うから、「えっ?」と間抜けな返事をしてしまった。
「マッサージ…ですか?」
「血の巡りを良くして疲労回復を促すのです。あと、美容にも効果がありますの」
「はあ…」
疲労回復はともかく、美容?騎士には必要無いと思うのだけれども。
「お、いいじゃんか!ミリィ、やってもらえ。アタシは先に上がってアスターをからかってくるわ」
「あ、はい……でも、あんまりアスター王子をからかわないでくださいね。可哀想ですから」
ピッツァさんがアスター王子に絡むのはいいけど、いつも彼の分が悪くなるからそう言えば、ピッツァさんはにやりと笑って「なんだミリィ、やっぱアスター庇うんだな」となぜか嬉しそうだ。
「はあ、まあ……一応、上司ですから」
「……ま、いっか。じゃあ控えめにいっとくわ。また後でな」
ひらひら手のひらを振りながら温泉から出たピッツァさんは……すっぽんぽんのまま、なにも隠すことなく外へ。相変わらず豪快なひとだ。
そして、残ったわたしにも恐怖の時間が待ち受けていた。
「ふふふ……以前からミリュエール様のマッサージをしたかったのですよ。お覚悟なさってくださいね?」
底光りする目をしたマイルさんが両手をワキワキと動かしつつそうおっしゃいましたが…わらわらと出てきた何人もの侍女に囲まれ、有無を言わさずマッサージ室へと強制連行されました…。



