「アクア、調子はどう?」
「ブヒン」
朝食後近衛騎士団の厩舎に手伝いに来たついでに、愛馬であるアクアの状態も見に来た。
去年ユニコーン密猟事件で関わったことがきっかけで、アクアはユニコーンの仔を身籠ってる。出産は7月辺りだろうと馬丁さん(ばてい・馬の世話をする人)に教えてもらっているから、その日が楽しみだ。
(ちなみに、馬の妊娠期間は11〜12ヶ月だそう)
お腹もかなり大きくなってきてるから、当然人間が乗ることはできない。
だから、代わりの馬を探さなきゃならないのだけど。アクア並みに丈夫で、肝が座り、体力オバケな馬はなかなかいないんだよね。
すっかり顔馴染みになった馬丁のおじさんが、従業員に指示を出しながらこちらへ顔をだしてくれた。
「お、ミリィか。アクアの腹の仔は順調みたいだぞ」
「ありがとうございます。なるべく放牧しないとアクアは不満になって暴れますからね」
「確かにな。一度暴れまくって木造の厩舎全体を破壊したからな」
「……その節はすみませんでした……」
確かに、アクアの怪力と気性の荒さで一度この棟全体を完膚なきまでに破壊しつくしてた。馬にかかわるすべての人が、ここまで暴れる馬を知らないと口をそろえるほどの暴れっぷり。
「いや、これほどの馬を世話できるんだ。それくらいチャラさ!きっとすごい馬が生まれるって期待してるからな」
(すごいどころか幻獣のユニコーンの仔なんだけどね)
混乱するし狙う輩がいるかもしれないから、ユニコーンの仔ということは伏せてる。出産の時だけ一部の信頼できる人に知らせるつもりだ。



