【完結】捨てられた男爵令嬢は騎士を目指す2〜従騎士になったら王子殿下がめちゃくちゃ甘いんですが?

4月。

厳しかった冬の気配もようやく去り、暖かな空気に萌えいづる緑で気分も浮き立つ季節。
日の出も日に日に早くなり、1日が長くなる。

数千人が暮らす近衛騎士団の食堂は規模が大きくて、いくつかに別れてる。アスター王子が使う上級騎士用の食堂は王侯貴族が使うのと変わらない豪奢な造りで、他の食堂や騎士団と違い給仕がいる。

だから、騎士見習いのすることと言えば上司が汚れた指を洗う水を持って突っ立ってること。これがなかなか厳しいけど、もう1年経ってるから慣れたものだ。

今日の朝食メニューはカモのソテーに付け合わせの蒸し焼き野菜。コーンスープにソーダブレッド。ゆで卵にフルーツ盛り合わせエトセトラ…

(……お腹すいた…ん?)

何やら隣の騎士から噂話が耳に入ってきた。

「おい、聞いたか?今朝宿舎に変態が出たって話」
「ああ、洗濯女から聴いた。なんでも全裸で走り回ってたらしいな」
「ぶふおっ!」

ちょうどコーンスープをスプーンで口にしていたアスター王子は、盛大に吹き出してた。

サッ、と布のナプキンを手にして彼に渡すと、ゴホゴホ咳き込んでいらっしゃる……けど。

「大丈夫ですか?鼻からコーン出てますよ」
「ゴホッ……だ、誰のせいだと思ってるんだ!?」
「え、アスター王子ですよね?そもそも、裸で寝てぼくを抱きしめなきゃ、ぼくがあんなことをする必要もなかったんですから。自業自得です。
というか、別に平気でしょう?いつでも裸ですから、人に見られるくらい」
「平気じゃない!」
「そうですか?その割に帰ってきた時嬉しそうに見えましたけど」