【完結】捨てられた男爵令嬢は騎士を目指す2〜従騎士になったら王子殿下がめちゃくちゃ甘いんですが?


「な……な、な!」

レスター王子は空気を求める魚みたいに、口をパクパクさせている。たぶんなにを言っていいのか思考が追いついてないんだろうな。
周りを取り囲むのはおべっかを使う連中ばかりだから。中味のない美辞麗句で持ち上げられて、いい気になった大きな子ども。

「ボクは王子で王妃の子どもで、アリュー王家の血も引いている!それに、美しすぎる。将来の国王に間違いないさ。それだけでボクは存在価値があるのだよ。ミリュエール、キミを王妃にしてあげられるのはボクさ!」

なんか開き直って髪をかき上げ、キラキラを飛ばしながらこちらへ流し目送ってきましたが…。

(げ……最高に気持ち悪い)

ドン引きどころじゃない。同じ空気を吸いたくもない。

それにしても、やけに自信満々に国王になると言い切ることが気になる。
水面下では国王陛下がアスター王子の立太子に向けて根回しをし、準備を進めていらっしゃる。様々な方面で内諾を得ており、レスター王子の立太子はほぼ絶望的だ。なのに…いくら政情に疎い目の前にいる阿呆王子でも、そろそろ気づかないとおかしいと思うのだけれども。

念のため探りを入れることにした。

「……そうですか。レスター殿下、あなたは自信満々に国王になられるとおっしゃいますが、誰がそのようなことを?」
「ふふん、聞いて驚け。なんと、ボール公爵だ!!」
「……は?」

耳を疑う名前が出てきて、思わず訊き返してしまった。

だって……ボール公爵は、今まで大貴族の中で唯一アスター王子を支持し、理解してくださっていたお方だ。彼がいたからこそ、アスター王子は貴族の支持を取りまとめられたのだ。