【完結】捨てられた男爵令嬢は騎士を目指す2〜従騎士になったら王子殿下がめちゃくちゃ甘いんですが?


いくらアスター王子の婚約者でも、今のわたしは近衛騎士の見習い従騎士。レスター王子の方が立場は上であり、仕えるべき人物。不本意でも、礼儀は尽くさねばならない。

仲間とともにその場で膝をつき、頭を下げて挨拶をした。
巻き込んでごめん、同僚のトムくん。蒼白な顔でこの場に留まってくれた勇気、決して無駄にはしないから。

「レスター殿下、ご無沙汰いたしております。ご健勝なようで何よりでございます」
「ああ、そんな堅苦しい挨拶などいらないよ。一度は将来を誓いあったボクとキミの仲じゃないか。美しすぎるボクとキミは生まれた時から結ばれるべき運命(ディスティニー)……さあ、ミリュエールよ。恥ずかしがらずにボクの胸に飛び込んでおいで!」

ガバっと両手を広げ、恍惚した笑顔を浮かべたバカ王子を見たトムくん……ますますドン引きしてるね。うん、初めて見たなら精神的ダメージすごいだろうな。

これ以上大切な仲間のメンタルがやられないために、わたしはキッとレスター王子をきつい視線で見据えた。

「レスター殿下」
「なんだい?ハニー」
(うわ……気持ち悪っ)

たぶん、色気を出してるつもりだろうけれども……髪をかき上げながらの流し目。ハッキリ言って気持ち悪いし、見たくもないです。

「わたしは、以前も申し上げたはずです。今わたしはアスター殿下の婚約者であり、あなたとは無関係です、と。なのになぜ、あなたはいつまでもわたしを恋人扱いするのですか?だいたい、一年前に他の女性を愛するとわたしを悪者扱いし、そちらから一方的に婚約破棄されましたよね?捨てたわたしを今更、どうして必要となさるのですか?」

キッパリ、ハッキリ、スッキリと、言いたいことを言わせていただきました。