「げっ」
王宮に戻った瞬間、そう声を上げたのは仕方ないと思う。
だって、なんか花束を抱えて意味不明なポーズを取ったレスター王子が遠目に見えたんだから。
キラキラ光る派手な服を着込み、腰に手を当てて額に指を当てて視線は斜め上。たぶん、アレが自分が一番かっこ良く見えると思い込んでいるんだろう。婚約者時代に鏡で練習してるのよく見たわ…。
「ミリィ、アレいるぞ」
「……わかってる。鳥肌立ってるから」
同僚の従騎士に教えてもらえたのはありがたいけど、この場に足を踏み入れた時から本能的に警戒心が高まっていたから、バレバレなんだよね。
「ぼくの後ろに隠れなよ」
「ありがとう……でも、いいよ。別ルートでなかに入るから」
バカ正直に真正面から相対するつもりはないから、一度もと来た道を引き返す。そっと足を踏み出したつもりなのに、なにを察したのかレスター王子から声が発された。
「おお、そこにいるのは麗しきわが恋人ではないか?ミリュエール、相変わらず恥ずかしがりやだね。ボクが美しすぎるから、と遠慮することはないんだよ?」
……誰か、コイツのお花畑頭を治してほしい。心底そう思う。



