【完結】捨てられた男爵令嬢は騎士を目指す2〜従騎士になったら王子殿下がめちゃくちゃ甘いんですが?


「摘発したくても、証拠がないものね…」

事前に情報を入手しているのだから、前もって防ぐために連中を捕縛したい……けれど。相手は今やフィアーナの副王。女王陛下に次ぐ地位を持つ相手。 
迂闊にこちらから手を出せば、国際問題になるだけでない。相手がこちらゼイレームを攻撃をする格好の材料になってしまう。

しかも、連中は用心深く会話以外の証拠を残さない。密談は常に人気がない開けた場所でするから、誰かが聴いたとかの手段も取れないわけだ。

『それより、問題は呪術師だな。私に呪いをかけた輩が常に密談のそばにいる。相当な力を持つゆえに、迂闊に近づけば察知され逆に操られるだろうよ』
「……それなんだよね、一番頭が痛いのは」

はぁ、と思わずため息が漏れてしまう。
ブラックドラゴンほどの龍を暴竜化させた呪術師の存在……。

あの王宮襲撃事件を引き起こした張本人。

幸い旧き森の神聖な力でブラックドラゴンの呪いは浄化されたけれども……もし、それがなければブラックドラゴンはあのまま暴れ回り、ゼイレームは焦土と化していたかもしれないし、彼自身も討伐されたかもしれないんだ。

国王陛下やブラックドラゴン自身はわたしのお陰と感謝してくださるけれども……わたしができたことなど、ほとんどなかった。

こういうときに、魔力があったら……なんて少なからず考えてしまう。

そう考えてしまう自分の弱さが嫌だ。

大半……どころか、ほとんどの騎士には魔力などない。それでも皆頑張っているんだ。

ソニア妃やアスター王子が規格外なだけで。