けれども、ブラックドラゴンがゼイレームの守護龍となったことは防衛で有利となっただけではないメリットがあった。
『フィアーナにおる仲間から報せがあった。どうやら、あちらの不穏な気配が具体化しそうだと』
「……国境を狙う動きが活発化しそう……か」
『愚かな者どもは、すべて筒抜けということに気づいておらぬようだがな』
ブラックドラゴンが皮肉めいた口調になるのは仕方ない。かつて彼に呪術をかけ暴竜にした輩が、その後もずっと悪巧みに関わっているのだから。
「国王陛下がおっしゃられたかつてのゼイレームの公爵が密事の主犯か……」
そう。
これから起きるかもしれない事件の前兆……それを起こすだろう人物はすでに判っている。ブラックドラゴンが持つ龍独自の情報ネットワークで、正確無比な情報が集まってくるんだ。
ちなみに、そのネットワークは龍だけでなく他の生物や……中には植物まで情報提供しているとか……よくわからないけれども、すごい。誰もそこらの草木が話を盗み聞きしてるなんて思わないだろう。
もちろん、人間だとてただ手をこまねいているわけじゃない。間諜(スパイ)が頑張って情報の裏取りをしているから、ブラックドラゴンのもたらす情報がどれだけ正しいかはきちんと証明されている。
『彼奴らが狙うは、来月の婚姻式。首都に警備が集中するすきを狙われるぞ』



