【完結】捨てられた男爵令嬢は騎士を目指す2〜従騎士になったら王子殿下がめちゃくちゃ甘いんですが?


アスター王子の右腕を抱え込み、背負ったまま勢いよく前に投げる。最近の鍛錬で覚えた一本背負いが見事に決まり、ちょうど開いていた窓から外へーー近衛騎士団の宿舎の通路辺りに飛んでいった。

そして、すぐさま開いた窓を閉じてからしっかりカギを締めた。

「……おい、ミリィ!開けろ!!」

残念ながら(?)目が覚めたらしいアスター王子が窓ガラスを叩くけど、わたしは知らん顔を貫き通す。

女性騎士は少ないけど、宿舎や騎士団本部で働く女性は少なくない。当然、朝早くから働く女性は宿舎の道を通るわけでして…。

「きゃああ!ち、チカーン!!」
「変態よ!変態がいるわ!!」

若い女性の悲鳴が早朝の宿舎に響きわたり、それを聞きつけた警護の騎士が駆けつけてきたらしい。早朝からご苦労さまです。

「どうしました!?」
「あ、あちらに……は、裸の変態が!!」
「きっと暖かくなってきたからですわ!」
「わ、わかりました!オレが捕まえますから安心なさってください!……あ、待て!!」

慌てて逃げたらしいアスター王子の足音が遠ざかり、わたしは黙々と朝の支度を進める。

「……また、散らかってる。騎士の見本を見せてくださいって言ってるのにな」

ぶつぶつ言いながら部屋を片付けていると、バタン、と勢いよくドアが開いて全身に土やら木の葉を身に着けたアスター王子が入ってきましたよ。

「おかえりなさい。よく逃げ切れましたね」
「ミリィ…覚えてろ…わプッ!」
「はいはい、さっさとお湯で体を拭いて服を着てください。朝食に遅れますから」

時間がもったいなくて文句を聞く気もないから、タオルを投げてからお湯を張った桶を着替えとともにテーブルに置いておいた。