まあアスター王子の目論見どおり、フィアーナ側からこの縁談は間違いなく断られるだろう。
大貴族もレスター王子を支持しているとはいえ、3度も婚約破棄したわがまま王子に愛娘を嫁がせたい家はない。なにせ、貴族中の貴族で王家の血をも引くバーベイン公爵家のソフィア様との婚約すら破棄したんだ。しかも、彼女は15年間婚約者だったのに。
結果、ソフィア様は第1王子のアルベルト殿下と改めてご婚約され、今年6月に華燭の典を挙げられる。誰が見ても相思相愛でお幸せそうなのは僥倖ではあったけれども……。
普通なら、どんな理由であれ婚約破棄された令嬢は傷物扱いされてしまう。男性ならばそこまで深刻な影響はないのに、貴族令嬢……ましてや王家の姫ならば安易に縁談を決められない。
3度も婚約破棄した末に、68歳の愛人がいるわがまま放蕩王子。しかも父国王陛下から見放されている。誰が好き好んで大切な娘を嫁がせたいだろう。
(でも……だからこそ、本人も王妃様も自棄気味になってる気がする)
最近、またチラチラとわたしの視界にレスター王子の姿が入ることが増えてきた。気配を察したら今のところ上手く逃げてはいるけれども……正面から来られたら、アレでも一応仕え護るべき対象にあたる王子殿下だ。不本意でも従わねばならない…?
フランクスから小耳に挟んだ噂だけど、レスター王子は変装して街中にも出ているらしい。ナンパ……みたいだけど。自分の近衛騎士や侍従を変装させないまま同行させているから、悪目立ちして誰も近寄らないらしい。
一応、本人なりに婚活に必死になっているのか……な?



