それでもなんだかドキドキと胸が鳴り落ち着かない気分に悔しくなり、ついつい余計なことを口走ってしまう。
「それにしても、珍しくアスター王子がかっこよくマトモに見えますね」
「……オレはいつだってカッコいいぞ?」
フッと笑ってわざとらしく髪をかき上げたお調子者のアスター王子に、ついつい吹き出してしまう。
「本当にカッコいい人は自分で言わないものですけど?レスター王子みたいになりたいなら話は別ですが」
「ぐっ…」
暗愚な異母兄のことを例に出せば、さすがに彼も同じ
になりたくないからかダメージを受けて口を閉じた。
「……レスターか……今、一番頭が痛い問題であるな」
王子達の父親であられる国王陛下が、額に指を当ててため息をつかれた。眉間にしわが寄るくらいだから、相当悩まれておられる様子。
ちなみに、今日は国家機密などにも触れる話し合いもされる。庭園で話し合いだから誰もが盗み聞きできると思われるかもしれないけど、ソニア妃とアスター王子とで二重三重の結界を張ってるから盗聴等は不可能なんだよね。
「父上……レスター兄上はまだ縁談が?」
誰もが口にしづらい話題を切り出したのは、やっぱりアスター王子だった。
国王陛下はああ、と唸るようにお返事を返されると頭痛のもとになるとんでもない話を告げられた。
「ソニアはレスターの妃に他国の王女を、とフィアーナ王国のプリスマ王女へ縁談を申し込んだらしいが……」
「ファニイ女王の愛娘の…ですか!?」
アスター王子もさすがに驚いたのか、目を見開いた。それくらい、ありえない話だった。
(プリスマ王女殿下……ファニイ女王陛下の第一王女で、女王陛下そっくりのお美しい方と聴いたことがある。現在の夫のロゼフィン王配殿下とのお子ではないとはいえ、大切にされてらっしゃり、どんな大国からの縁談も断られてきたとか…そんな掌中の珠の王女殿下を、レスター王子と娶せるわけがない)



