「確かに、王妃となるならば色々と必要よねえ〜政治力とか人脈とか知識なんかも〜」
ソニア妃が口元に手を当てて、う~んと唸った。
「もしミリィちゃんが嫌じゃなければ、わたしがゼイレームに来てから学んだ先生方を紹介するけど。それぞれの専門の超一流だし、王妃様と同じ教育係だったから信頼できると思うわ」
「ありがとうございます。ぜひ、お願いしたいです!」
ソニア妃の提案はありがたくて、一も二もなく飛びついた。自分に足りないものがありすぎて、何をどうすれば、どこから手をつけていいか正直わからなかったところだ。
けれど、なぜかそれに待ったをかけたのがアスター王子だった。
「ミリィ、そんなに急がなくていい。父上が譲位されるまであと十年近くある。まずは王子妃として最低限の教育を受けてから、王太子妃教育…それから数年間かけて王妃教育を受けた方がいい」
「……はい」
「何事もまっすぐで努力家のおまえだ。気がはやり焦る気持ちもわかるが、まずは落ち着け。たとえ失敗しても、周りがきちんとフォローするし……何よりオレがいる。おまえのしたことはすべてオレも責任を持つ。だから、失敗を恐れずにおまえの好きにすればいい」
なんでだろう……
胸が、ドキドキする。
アスター王子の優しく包み込まれるような眼差しが、わたしの焦りを溶かし、かつてない安心感をもたらす。
彼がそう言うなら、絶対そう決めているということ。信頼度は誰よりもある。だから、素直に受け入れることができた。
「……ありがとうございます……確かに、わたしが焦りすぎていました。もっとゆっくりとマイペースでいきます」



