【完結】捨てられた男爵令嬢は騎士を目指す2〜従騎士になったら王子殿下がめちゃくちゃ甘いんですが?


国王陛下がこんなふうに愉しげな様子はなかなか見られないし、いつもは厳格なお父様がまるで少年のように狼狽える様も初めて見る。

本当に、お二人は仲が良くて友情を育んでらっしゃるんだ……そう思うとなんだか嬉しいし、ほっこりと胸があたたかくなる。

「父上……さすがにそろそろやめてはいただけませんか?」

わたしのお父様をからかわれ楽しまれた国王陛下は、息子のアスター王子に注意された途端、真面目な顔に戻り咳払いをされた。

「うむ……そうだな。今日は婚約式……ひいては婚姻に繋がる大切な話し合い。国の将来を左右する重大ごとだ。それゆえ、私も参加する」

多忙な国王陛下が分刻みのスケジュールを調整してまで参加されるんだ。これは、ただの話し合いではない……と身が引き締まる思いだ。

「そうねえ〜まぁ、エストアール家の跡継ぎについてはミリィちゃんやサルバンくんの提案通りでいいんじゃなあい?レトムくんが養子入りも次善の策として最良だと思うわ〜」
「うむ。ひと通りの審議は必要であるが貴族院の反対もあまり無かろう。もし貴族院が反対しても、私が勅許を出せば済む話であるがな」

ソニア妃がエストアール家の跡継ぎ問題を先に挙げると、国王陛下も頷いて賛同してくださった。

「以前より、サルバンには話を聞かされておったからな。よく考え抜かれた上に根回しも十分されておる。大丈夫だろうよ」
「お父様が……」

やはり、お父様はすごい人だった。娘のわたしがどんな将来を選択しても良いように、事前に用意周到に準備してくださっていたなんて。

「お父様……ありがとうございます」
「ゴホッ……いや……親ならば当たり前のことをしたまでだ」

わたしがお礼を言うと、まだ先ほどの余韻か頬がほんのり赤らんだお父様は、ぶっきらぼうにおっしゃられた。