意外過ぎる事実だった。
お母様がかつて国王陛下のお妃候補であって、お父様がライバルとなり陛下から奪った形になるなんて。
「お母様……本当ですか?」
思わずお母様を見て疑問を投げれば、少し目を伏せて「ええ」とおっしゃられた。
「わたくしがノプットからゼイレームへ来たのは、国王陛下の招待で。18年前にノプットに訪問された時に接待したことが縁で……でも、その時はお父様もご同行されていらしたの」
「……お父様がノプットに……?」
そういえば、以前お父様は国王陛下の他国訪問時に同行されていた記憶がある。それがきっかけでお母様に一目惚れされたんだ。
「そうだな。サルバンの様子は実にわかりやすかった。何があろうと冷静沈着かつ動じない男が、マリアンヌを目にした途端に固まって頬が赤らんだのだからな。すきあらばチラチラとマリアンヌを見ていたしな」
「へ、陛下!もうその話はいいでしょう」
びっくりした。
あのお父様が……ほんのりと顔を赤らめて、慌ててらっしゃるなんて。
焦るお父様と反対に、陛下はなんだか楽しそうに笑ってらっしゃる。
「私だとて、友の想い人を奪うような真似はせぬよ。誰かがお膳立てせねば、サルバンはそのまま何も行動を起こさなかったろう。案の定、私の妃にという話が出た途端サルバンは直談判しに来たわ……“マリアンヌ殿をください”……とな」
国王陛下の話からすればお母様がお妃候補だったという縁談は、どうやらお父様を焚きつけるための偽の話だったということ。
事実、こうして2人が結婚しなければわたしが生まれては居ないのだから、感謝すべき……なのかな?
少しだけ、複雑な気分ではあるけれど。



