【完結】捨てられた男爵令嬢は騎士を目指す2〜従騎士になったら王子殿下がめちゃくちゃ甘いんですが?


アスター王子の正式な謝罪を見たわたしは、ハッと我に返る。騎士として誰よりも誇り高い彼は、めったに頭を下げないし、下げてはいけない。
だって彼は王族であり、そのうち立太子し将来は国王陛下となる。そんなに軽々しくなすべきものじゃない。

(今のはわたしがいけない!きちんと説明をしなくては)

「アスター王子、申し訳ありません。きっとわたしの言葉が悪かったんです……お父様!」

まだ怒り狂うお父様の前に出て2人の間に立つと、キッとそのお顔を見上げた。

「アスター王子は、わたしには何も無理強いなどしたことはありません!彼は、いつもわたしの意思をきちんと尊重してくださってます。確かに厳しい時もありますが…それは、わたしが人として騎士として成長するのに必要だからです。わたしはそんな彼だから信頼していますし、そばにいたいと思うのです。
彼はいつだってわたしのために一生懸命で……だから、もし、お父様がくだらない理由でアスター王子を斬るならば、わたしは……」

模造剣だけど、腰に下げた剣の柄を握りしめてキッとお父様を見据えた。

「先に、お父様を斬るかもしれません」

お父様は歴戦の勇士。まだ実際に戦場に出たこともない小娘のわたしが、本気で怒る迫力には敵うはずがない。威勢のいいことを言ってるけれど、実際には心臓がばくばくして、緊張に体がふるえる。身体中冷や汗をかいて、つうっと額に汗が流れた。

それでも、ギュッと唇を噛み締めてありったけの勇気を振り絞りお父様を睨み続けた。