レトムの言葉は謎掛けみたいだ。よくわからなくて髪の毛を直しながら彼を見上げて訊ねた。
「え?誰が誰を見てるの??」
「おまえの婚約者どのだよ。すげーオレを射殺しそうな目で見てる」
「アスター王子が?」
はて? レトムとアスター王子は面識あったかな?
「レトム、アスター王子と顔見知りだったの?」
「いや、オレは知ってはいるがアスター殿下はオレを知らんだろうな」
「なら、なんでアスター王子がレトムを睨むの?別にトラブルがある訳じゃないのに…?ちょ、やめてよー!」
せっかく直した髪をまたレトムにくしゃくしゃにされてしまうから、さすがに抗議をすると。彼はより相好を崩してニヤニヤしてる。
「まあ、見てろって!…お、きたきた!」
何が来たんだろう?レトムの言葉に反射的にそちらを見ると、アスター王子がいつの間にかこちらへ歩み寄って来てる。今日は近衛騎士団の制服ではなく、王子しか着用できない王族の詰め襟の制服を着ていて、一見にこやかな笑顔を浮かべる完璧な王子様だ。
だけど、なんだろう? 背中がヒヤリとするような冷気を感じるのは。
「ミリィ」
「はい」
「この方は?ずいぶん親しげなようだが……」
「彼は」「はじめまして!オレ……私はレトム・ルヤートと申します。ミリュエール嬢の又従兄弟にあたりまして、ラウル辺境伯で騎士として仕えていますが、この度エストアールへ養子入りすることになりました。つまり、ミリュエール嬢の義兄になります」
わたしが紹介するより先に、レトムが言葉を割り込ませて自己紹介を済ませてしまった。



