「おわかりになられるのですか…?」
さすがにお母様も驚かれたのか、少し目を見開いてらっしゃる……というか、新しい生命?お母様が??
すぐには理解できなくて思わずお父様を見遣ると、お父様も眉を落として深く息を吐いてらっしゃった。
「御懐妊ですか。それはこれ以上ない慶事ですね。おめでとうございます」
一番冷静だったのがアスター王子で、わたしのお母様に歩み寄るとそのまま騎士の礼を取り、お祝いを述べる。
(御懐妊……お母様に……新しい生命……ソニア妃やアクアと同じ……ということは……)
「お母様……お腹に赤子がいらっしゃるんですね……?」
ものすごく鈍いことだけど…やっと理解できてそう確認すれば、お母様はぱっと花を散らしたように頬を染めてらっしゃる。……うん、お母様の子どもだけど……子どもの目から見てもすごく可愛らしいです。
「この年になって授かるとは思わなかったのだけど……ミリィ、あなたの弟か妹が秋には産まれるのよ」
「そう……でしたか、おめでとうございます」
はにかむお母様はお父様と視線を交わすけど、お父様はいつにない優しくて慈しみ深い目をしてらっしゃる。わたしにも向けてくださる、とても愛情深い瞳だ。
「マリアンヌ、安定期ではないのだし、あまり無理をするな。少しでも気分が悪くなったらすぐ私に言うんだ」
「大丈夫ですわ、あなた。娘の将来に関わる大事なお話ですもの。母であるわたくしがしっかりせねばなりませんわ」
妻を気遣うお父様は、実はかなりの愛妻家。普段厳しい騎士の姿しか知らない人には意外過ぎるかもしれないけどね。