「それよか、おまえの方も騎士とか実家の跡継ぎはどうするんだ?アスター殿下と結婚していずれ王太子妃になるんだろ?」
フランクスもブラックドラゴンの話し合いの場にいて国王陛下のご意思は知っているから、その疑問を持つのは当然と言えた。
「うん、その点は考えているよ。騎士は絶対目指すし、エストアール家の跡継ぎも……一応、親戚に打診しようとは思っているけどね」
エストアール家にも一応、分家らしき親戚はいる。遠縁にはなるけど、幼い頃から度々会って人となりは知っているから、もしわたしがエストアール家を継げない事態になったら養子入りしてもらうつもりはあった。
本当はわたしがエストアール家を継ぎたい。先祖代々脈々と受け継がれた伝統ある武家の実家を継ぐために、ずっと努力してきたんだ。エストアールの娘であることは、わたしの拠り所で誇り。
けど…アスター王子が王太子に…国王陛下になる以上、わたしが妃になるなら現実的に考えてエストアール家を継ぐのは無理だ。
今まで頑張ってきたモチベーションの一番の源であったその理由が無くなると、やる気に影響が出るかと思った。事実、しばらくは自分を無理に鼓舞していた時もあったけど……。
今は、憧れの騎士に少しでも近づきたい。実家を継がねばならないというしがらみから解放されると、純粋にそんな想いが湧き出してきたんだ。
「……騎士は、絶対目指すよ。王太子妃になっても続ける。ぼくが一生かけて目指してきた道なんだから、絶対に諦めない」
「そっか……よかったよ。あれだけ頑張ってきたのに、諦めたらもったいないと思ってたからな」
フランクスがほっとしたような顔をしたから、彼なりに心配してくれたんだ…と嬉しくなった。
「うん、ありがとうフランクス。きみのおかげで色々整理できたよ」
もうすぐ婚約式に向けての話し合いが始まる。フランクスとの一時は、有意義なものだった。



