その日の夜、通常業務を終えてから訓練場で久々に馬上槍試合の練習をする。
どうもランス(槍)の扱いが不得手なわたしは、馬上槍試合以前の問題。ランスを上手く扱えねば、相手を落馬どころかこちらが落馬してしまう。

「はっ!やあっ!とうっ!」

地面の上でランスを突きだす練習をしてみるけれども、やっぱり的に当たらずにブレてしまう。

(うーん……どうも体重をかける時に変な癖がついてしまっているんだよね。まっすぐにでなく、前へ前へとかけるから、穂先がブレて的に当たらないんだ)

原因はわかっているのに、なかなか矯正できない。

思い悩んでいると、ぽんと背中を叩かれ振り向けば、訓練着に着替えたフランクスの姿があった。

「フランクス!」
「よ!馬上槍試合の練習か?」
「うん。どうにも変な癖がついちゃってさ……ただでさえ、体重も力も劣るのに、こんな事じゃ一回も勝てないよね……」

この1年ずっと同じ問題点を指摘され続けて、最優先で直す努力をしているのに、ちっとも修正できてない。さすがに落ち込み気味なわたしに、フランクスはなーんだ、と言わんばかりに鼻を掻く。

「やっぱりアスター殿下に見てもらえよ。こんなところでこそこそ練習してないでさ。殿下のランスの扱いはトップクラスなんだから」
「そうだね……」

変な意地を張ってる場合じゃないな、とフランクスのアドバイスを素直に受け入れることにした。