(アスター王子が王太子…国王陛下に?)
確かに、王子である以上はアスター王子がそうなる可能性はゼロじゃないと頭ではわかってた…つもりだった。
でも、実際にこうして現実を見てしまうと、嫌でも意識しなくてはいけない。
王太子はまだ決まってない現状、アスター殿下が最もその地位に近いのは確かだろう。
王位継承争いから遠ざかるためにも騎士を目指したのに、かえって名声や人気や評価が高まったのは皮肉と言うべきか…。
(もしも…アスター王子が王太子になったら……騎士でいられるのかな?)
いや、おそらく無理だ。
今は現役騎士だから王子としての公務や政務は免除されているけど、王太子になったら嫌でもそちらがメインになる。となると、わたしは騎士見習いとしてそばにいられなくなるんだよね?
すると、わたしがもしも仮にアスター王子のそばにいたいなら、近衛騎士として仕えるしかない気がする。
今は婚約者ではあるけど、ローズ様のように納得しない貴族も多い。アスター王子が盤石な国を築きたいなら、妃には誰もが認める身分と血筋は必要だ。
……なんて思考をあれこれ巡らせるのは、現実逃避だ。アスター王子からの問いかけに、真剣に考えたくないわたしの甘え。
アスター王子の近くにいたいか…は、答えはYESだ。
ただ、それはどんな意味でか。わたしはハッキリとした答えは出せない。
だから、ずるくてもわたしはこう答えるしかなかった。



