でも、わたしはもう決めたんだ。
アスター王子と一緒にいるんだ、と。
どんな困難が待ち受けていたとしても、彼とならば乗り越えることが出来る。この1年ずっとともに過ごしてきたから、そう信じられるんだ。

すう、と深呼吸したわたしは、大きくうなずいてからお父様の目をまっすぐに見据えて言い切った。

「はい。アスター殿下と一緒にいるためならば、王太子妃でも、王妃でも構いません。わたしは彼とともに生きたい……と思います。どんな苦難でも、逃げたり諦めたりせずに乗り越えてみせます」

わたしの答えを聞いたお父様は、大きな手で顔を押さえて大きなため息をつかれた。

「……そうか。ミリィ、おまえもそこまで強い決意をしたのだな」

そして、やがて眉間にあった深いシワがゆっくりとなくなると、一度瞑った目を再度開き、わたしをまっすぐに見て「わかった」とおっしゃられた。

「……おまえも、とうとう大切な人ができたのか……ついこの間まで子どもだと思っていたのにな……」

お父様はなんだか寂しそうで、それでいて嬉しげな。複雑なお顔をされる。

「大切……かは、まだわかりませんが……」
「いい。ミリィ、まだ、自分の想いを無理に名前を付けて整理しようとするな。エストアール家の人間はどうも人より遅いからな……まずは、一緒にいたいという想いを大切にしなさい。それから、ゆっくりと育てていけばよい」

お父様の実感が籠もられた話し方はやっぱりお父様自身が遅い初恋されただけあって、説得力があるものだった。

「ミリィがどんな選択をしても、親の私たちはおまえを信じ全面的に応援するからな」

涙が出そうなくらいに嬉しい言葉もいただけた。