【完結】捨てられた男爵令嬢は騎士を目指す2〜従騎士になったら王子殿下がめちゃくちゃ甘いんですが?


「これは……きちんと教えておかねば、アスター兄上が気の毒じゃのう」

わずか9歳の王女殿下からそう言われてしまうわたしって……。ちょっと落ち込みそうになる。

「はあ……申し訳ありません」
「マリア、あなた……どなたからそういった知識を教わったのかしら?」

ユリネ王女が異母妹にお訊ねすると、マリア王女はふんっ!と鼻息荒く得意気な顔で披露した。

「決まっておろう!下町で知ったのじゃ。本や様々な媒体があるゆえ、面白いぞ。中には絵で詳しく書いたりしておるし、庶民の話を聞くだけでもためになる」

やっぱり……というか、案の定。マリア王女は脱走騒ぎを起こしているだけあり、城下町で色んな知識を仕入れているようだ。

「そうじゃ!ミリュエールにわしの本を貸してやろう!夫婦には必要な知識が詰まったありがたい本じゃぞ。房事のことも書いてあるゆえ、勉強になるぞ」
「……そ、そうですね。本ならいつでも読めますし、勉強させていただけたらと思います」
「そう思って今日持ってきておるぞ?ほれ、好きな本を貸してやろう」

(……絶対最初から貸すつもりだったんだ)

マリア王女の後ろに控えていた侍従から、数冊の本がテーブルに並べられる。どれも平民がよく使う手刷りの本だ。紙自体が貴重品だから、本は高価な品で平民はめったに買えない。
ただ、かなり読み込んだ跡がある。マリア王女なりに熱心に勉強されているんだろう。

(あ、これがいいかな?)

“夫婦の寝室のたしなみ”というタイトルの本があり、それに手を伸ばす。本を開いてみると、突然目に飛び込んだのは、裸になった男女が抱き合うイラストだった。