「マリアったら、相変わらずですねえ」
のほほんとおっとりした口調で喋られたのは、マリア王女の異母姉であるユリネ王女殿下。
綺麗なオレンジ色の髪をゆったりと結い上げ、黄金色の瞳に合わせた小ぶりな花のアクセサリーで留めてらっしゃる。15歳にしては小柄で華奢な身体をふんわりとした薄紅のコットンのドレスで包み、ゆったりとした優雅な所作でティーカップを持ち上げた。
「昔からお転婆で向こう気が強いもの。わたくしの縁談が決まって焦ったのでしょう?」
「……それは、無いとは言えぬな」
驚いたことに、マリア王女はユリネ王女には素直な気持ちをあっさり吐露していた。
6歳差があるし、生母の違う異母姉妹。けれど、どうやらアルベルト王子とアスター王子のように、年の差や生母が違っていても、仲がいいご様子。
その点は安心できたし、なんだかほっこりと胸があたたかくなる。
「ミリュエールさん、でしたわね?」
「はい」
突然、ユリネ王女から呼ばれて反射的に立ちあがってしまい……周りからクスクス笑われてしまいましたよ…。騎士見習いの慣習です。
ユリネ王女とはレスター王子婚約者時代に面識はあったものの、直接言葉をかわす機会はなかったから、これがほぼ初めてになる。
「マリアを許してあげてくださいね。聡くても、やっぱりまだ子どもなのですもの。でも、フランクスくんのことはきちんと考えいるはずですわ。やっぱり好きな男性(ひと)には嫌われたくないはずですからね」
「あ、姉上!す、す…好きだとかそんな事を恥ずかしげもなく」
「あらあ、違ったかしら?」
マリア王女が珍しく焦った様子で姉に突っかかるけれど、ユリネ王女はおっとりと微笑んでいるだけ。これは…マリア王女は敵わないな、と思わず苦笑いをしてしまった。



