でも、わたしには引っかかる事がある。
“結婚が決まった女性ばかり”というマリア王女の発言。
確かに、マリア王女はわたしの同僚従騎士であるフランクスにメダリオンを渡して、国王陛下もご結婚を許しておられる様子だった。
けれども、話し合いの際のフランクスの様子から察するに、彼はメダリオンの贈り合いが求婚の慣習があるとは知らなかったみたいだし。陛下からご結婚の話をされ困惑していた。
そりゃそうだ。
まだ14歳の一介の従騎士が、9歳の王女殿下から求婚されるなんて思いもしないだろう。
(わたしの時みたいに…なし崩し的に婚約が成立しては遅いよね)
フランクスに好きな女性がいるかは聞いた事がないけれど、聞いた事がある数少ない恋愛話から推察すれば、彼は平凡だけど優しくておとなしい女の子が好みだったはず。見事にマリア王女とは正反対だ。
ここはひとつ、フランクスの親友としてきちんとマリア王女へ意見しなきゃ!と、テーブルの下で拳を握りしめた。
「マリア殿下、ひとつよろしいでしょうか?」
「なんじゃ?さっそくアスター兄上とののろけ話か?」
マリア王女はキラキラした期待に満ちた目でわたしを見るけど……そんな話はどこを掘っても出ませんので、あしからず。
「違います。わたしの親友であるフランクスとの縁談についてですが」
「なんじゃ、違うのか……」
あからさまにがっかりされましてもね……。
「フランクスがなんじゃ?彼の好みの話か?」
「いえ……ただ、不躾を承知で申し上げますが……この婚約について、殿下はきちんとフランクス自身の意思を確かめられましたでしょうか?」



