まさかアスター王子がそこまで考えてくださっていたなんて、思いもよらなかった。
去年の狩猟会のパーティーで婚約をした時だって、具体的な話はなにも出なかったのだし。縁談避けですよね?とわたしが言っても、彼は否定も肯定もしなかったから。
わたしが常々、エストアール家を継ぐと明言してきた事まできちんと考えてくださっていたんだ……。
胸が、じんわりとあたたかくなる。
アスター王子が触れた場所までが、なんだかぬくもりが高まって感じられて。生まれてはじめて、男性に包まれる心地よさを知った。
お父様やお母様とは違う。初めての感覚に戸惑う気持ちはあるけれども…。
アスター王子だから、いい。そう思った。
でも、なし崩し的にせずにわたしはきちんと謝罪すべきだろう。そう思ってアスター王子の顔を見上げる。
「……そうですか……そこまで考えてくださっていたなんて思いもよりませんでした。ありがとうございます。確かに、わたしの態度で言い出せないのは当たり前でしたね。申し訳ありませんでした」
「……いや、オレも曖昧にせずもっと早くはっきりさせるべきだったな。そのせいで、おまえを迷わせてしまった」
やはり、アスター王子はきちんと自分の非を認める事が出来るお方だ。わたしの前の婚約者であるレスター王子とは大違い。
この方となら、一緒に歩いていける……と。そう思う。



