【完結】捨てられた男爵令嬢は騎士を目指す2〜従騎士になったら王子殿下がめちゃくちゃ甘いんですが?


さすがにここまで隠し事が多いと、自分の信用度は無いのかと悲しくなる。
アスター王子をキッと睨みつけながら出した声は、震えないようにすることが精一杯だった。

「そんなに、この婚約…ぼくが、信用出来なかったんですか?」
「違う!ミリィを信用しなかったわけじゃない!!」
「じゃあ、なんですか!?ぼくがあっさり婚約破棄するとでも考えていらしたんですか?」
「そうじゃない!」

アスター王子はわたしの肩を軽く掴むと、自分に引き寄せて抱きしめてきた。

「……そうじゃないんだ、ミリィ。よく聞け。オレは、おまえの将来を縛りたくなかったんだ」

耳元で少しだけ低く囁かれた言葉と彼の腕のなかで、不思議と昂った感情が落ち着いてきた。
初めての経験に戸惑いながらも、アスター王子の言葉に集中しようと気を引き締める。

「ぼくを縛りたくなかったとは…どういうことですか?」
「おまえは、常にオレに言ってきただろう?オレに恋する者があれば、いつでも婚約破棄してくれと」
「あーはい……確かにそうですね」

身に覚えがありすぎる言葉だから、素直に認めるしかなかった。

「逆もそうだ。オレは、おまえが他の男に本気で恋をしたなら、いつでも婚約破棄する覚悟はあった。気持ちが定まらぬうちに、なし崩し的に婚姻させたくはなかったしな…もしもおまえが本気で騎士を目指すなら、エストアール家を継ぐ時に他の騎士を入り婿にする必要もあっただろう。だから、オレは婚約式のことは言えなかった。婚約式をすれば婚姻は確定的になってしまうからな」