「……ですが、アスター王子にはっきりしていただきたいことがあります」
ジロッとわたしが睨みつけると、アスター王子は身体を揺らす。
「わたしは、アスター王子から破棄せぬ限りは婚約者でいます」
もう一度、はっきりと自分の口から自分の意思を告げた。
「ミリィ」
なぜか、アスター王子は感激したように見えるけど……わたしはその目をまっすぐに見据えて、問いかける。
「アスター王子!」
「な、なんだ?」
「もしもあなたが今、婚約に少しでも不安だったり躊躇うようならば、この場でこの婚約を破棄していただけますか?もちろん、愛する者がいるならば破棄して頂いても構いません。ですが、事情ある恋人がいて隠れみのとして婚約したままでいたいならば…その女性(ひと)の尊厳に対する冒涜ですから、さっさと破棄してください」
わたしがずっと言いたかった事を問い詰めれば、アスター王子はなぜか額に手を当ててため息をつく。周りも彼を可哀想な子を見るような目で見てた…なぜ?
「……アスターよ、不器用過ぎて伝わってないようだが?」
「だから、手強いって言いましたよね。父上」
国王陛下とアスター王子がそんな会話をしている意味がわからないけど。



