問い詰めたアスター王子が言いよどんでいると、国王陛下が突然愉しげな笑い声を上げられた。
「はははははっ!アスターよ、ずいぶん尻に敷かれておるな。ミリュエールも息子の扱いが上手いではないか?」
「……父上……その息子のピンチを楽しんでらっしゃいますね?」
アスター王子が呆れ顔で父親を見遣ると、国王陛下はまたにやりと含みのある笑みを作られる。
「それはそうだろう?生まれてこの方色恋沙汰など一切縁がなかった息子が、このように変わるとはわしも予想外でな。騎士の息子として生まれて武芸のみに生きてきたおまえがな……ソニアの眠り病の件では誰よりも献身的に母親に尽くしてはいたが、おまえはいつも一人で努力し続けていた。孤独なおまえを支える者が居ないもの…かと常々案じておったのだ」
そうおっしゃられた国王陛下は深い苦悩を滲ませられ、父親としてのお顔をされていた。
「他の妃の子にはきょうだいがいたが、ソニアにはおまえ一人。きょうだいがいればまた違っていたろう……わしも国王という重責ゆえに、常におまえにかまけてばかりはゆかぬ。その結果誰にも頼らずに生きようとしたおまえは、ソニアを…母を救うために騎士となった。母を救う方法を探すために、各地を駆けて……皮肉な事に、騎士として適正がありすぎたゆえに、名声を得て英雄扱いされるたびに不憫さを感じざるを得なかったのだ」



