「はははは! 実にエストアールの娘らしき、頼もしい言葉よの」
わたしの答えになぜか国王陛下は呵呵大笑されたけれど、満足気なご様子であられたからいいかな?
そして、国王陛下はそのまま息子へと矛先を変えられた。
「アスターよ、ミリュエールはこれほどの覚悟をしておる。そなたも負けられぬな」
「もちろんです。ミリィならばそう言うと思いましたからね」
アスター王子は視線を父親の国王陛下からわたしへ変えたけれども……なぜか、ドキッと胸が大きく鳴った。
アスター王子の目には慣れているはずなのに、澄んだ水のような淡いブルーの瞳を見た瞬間…わたしの胸がざわめいて、なにかふわふわしたあたたかなものに包まれたような…そんな不思議な感覚にとらわれて、落ち着かない気分になる。
「ミリィ」
「はい、なんですか?」
いつもと同じ調子でアスター王子に呼ばれるから、ついつい同じ反応を返してしまう。
「おまえの一番の夢は騎士になることだな?」
「はい。何があってもあきらめるつもりはありません」
きっぱりはっきりと言い切ると、アスター王子がふっと口元を緩めて笑みを浮かべる。
「だろうな。おまえのその清々しいまでのブレなさは、いつだってオレの迷いを断ち切ってくれる」
「え、そうなんですか?」
アスター王子が迷ったり悩んでる姿なんて、あまり見たことがない気がするけど。
「オレも未熟な、一人の人間にすぎない。だから思い悩む事も迷う事もある」
「なら、きちんとぼくに相談してくださいよ!これでもあなたの従騎士で部下なんですからね!」
悩み相談をしてくれなかった事にムカついて、ついついいつもの調子で会話をしてしまいましたよ…。



