「へぇ、じゃあアスター殿下はどうなんだ?」
トムソンにそう訊かれた瞬間、わたしは喜々として挙げた。
「剣技が素晴らしいでしょ、あと体力もあるし判断力も冷静さも指導力も群を抜いてる。たまに優しいし、笑えるし、よく裸でいたり、寝坊して遅刻するし、部屋はぐちゃぐちゃにするし、だらしないし、殴られて喜ぶ変態だし、野営でヘビ食べさせたら失神するし……でも、他にもたくさんいいところがあるよ!」
「……後半、けなしてないか?」
「え、なんで?事実を述べたまでですから!」
トムソンの言葉を流用してあげれば、プッと彼が吹き出す。
「おっと、俺も仕事がまだ残ってたんだ。じゃあまた後でな」
「うん、講義でね」
トムソンと別れてわたしも仕事をしようとアスター王子に挨拶をしてから歩き出すと、近衛兵と話をしていたはずのアスター王子に呼び止められた。
「ミリィ」
「はい、どうしました……えっ!?」
突然、後ろからアスター王子に抱きしめられて頭と身体がフリーズした。
背中に彼の見事な胸板の厚みと逞しさを感じて……ぶわっ、と顔が熱くなる。
「な、な……なにするんですかぁああっ!!」
ぶわちーん!!
わたしがアスター王子をぶっ叩く見事な音が、宮殿内に響いた。



