【完結】捨てられた男爵令嬢は騎士を目指す2〜従騎士になったら王子殿下がめちゃくちゃ甘いんですが?


フランクスとマリア王女の婚約話は一旦置いておき、国王陛下がアスター王子の立太子の話を内々にされたのは訳があった。

「父上、私はとうにその覚悟は決めておりましたが、やや性急な決定はやはり今回の件が影響をされているのですね?」

アスター王子が真剣な眼差しで父親を見遣ると、国王陛下は否定も肯定もされなかったけれど。先ほどの渋面をまた作られておられた。

「王太子の決定に関して先延ばしにしておったのは、わしの不断さよ。王妃は息子のレスターに強い意向があり、妃の出身国との外交上の懸念から明言は避けておったが……このままではより深刻な事態になりかねぬでな」

セイラ王妃の出身国は世界有数の大国プスムラム共和国。そこの旧王家のお姫様であるセイラ様は、宮廷ではかなりの発言力をお持ちでらっしゃる。

プスムラム共和国は今こそ共和国制を取って表向きは評議長が国家元首となってはいるけど、千年の歴史を持つ王家の求心力は未だにすごい。セイラ様がゼイレームに嫁ぐ際、王妃以上の位の創設を要求されたくらいだ。
まあ、セイラ様自身がそれを諌められたので、王妃の地位に収まったらしいけれどもね。

セイラ様自身少しだけ高飛車でプライドが高いお方ではあるけれど、他人を見下したり蔑んだりはなさらない優しいお方だ。王妃としての資質も申し分なく、他の妃方と協力してうまく宮廷を取り仕切っていらっしゃる。

血筋身分にこだわりはあるものの、愛娘のマリア王女の熱望にきちんと応える柔軟性もある。男爵を継ぐとはいえ、元は平民出身のフランクスを娘婿に迎えるなど、自尊心が高いひとなら猛反対するだろうに。娘の幸せを第一に考えてらっしゃるのだろう。やっぱり素敵なお方だ。