「それにしても、ゼイレームの王族の末裔が犯人とはな……」

真実を知った国王陛下の渋面が、事態が軽視できないことを物語っていた。

50年前にあった、国王陛下に近い血筋にあった公爵家の裏切り。北部最大の領地を持参金として領主はフィアーナ王国へと付き、その戦争でゼイレームの領土のおよそ2割が失われた。

フィアーナでは現在ファニイ女王陛下が即位され、戦乱の世は収まったけれども。もともとかの国は様々な小国が集まり、連合して生まれた国。
もともとの王や領主が副王として、王に次ぐ権力を持ち各地を治めている。だから、州ごとの独自性を持ち一筋縄ではいかない。

もちろん、ゼイレームを裏切った公爵家の末裔も副王として国境の州を治めている。

「……あくまで私の憶測に過ぎませんが、副王が自らに流れる王家の血から、ゼイレームへの野心を抱いたとしても不思議ではないかと」
「傍系などではなく、自らが正統なゼイレーム王家の血筋なのだ…と言いたいのかもしれぬな」

アスター王子の発言を受けた国王陛下は、そこへ説明を足して考え込まれた。

「あり得ぬ話ではないな……公爵家は派手好きで権力志向だったと聞く。もっと大きな力を欲するのは自然な流れかもしれぬ」