ゼイレームの首都にある王宮の謁見室。公的な大広間ではなく、国王陛下が個人的に人とお会いするやや小ぶりなサイズの部屋は、もと武人の国王陛下らしく華美な装飾を一切排した石造りの簡素な造り。それでも足が埋まるほどの敷物や、シンプルだけどセンスがいいランタンなど実用品は高価なものだった。

「……それで、フィアーナに下ったゼイレームの元王族の末裔が、此度の騒ぎの犯人ということなのだな?」

今一度確認するようにガウン姿の国王陛下がおっしゃると、御前で膝を着いた近衛騎士の制服姿のアスター王子が「はい」と答えた。

「ブラックドラゴンの証言は信用度が高いとみてよろしいかと存じます。彼らは嘘偽りを吐く卑怯さはあらず。その清廉さや誇り高さは人間よりもよほど信頼がおけます」
「ふむ……わしも一度龍と相対したことがあるが、確かに人と違い自らの益のために行動するなどあり得ぬでな」

御年50近い国王陛下であられるけれども、髪が白くなった以外は屈強な体躯といい、威風堂々とした雰囲気といい、お若くてそこらの武人に負けそうにない。昔は戦で自ら先陣を切る事もあったほどだそう。今も狩りを好まれるし、毎日鍛錬を怠らないからこそだろう。

今は、王宮をブラックドラゴンが襲った事件についての報告と事後処理に関する秘密の話し合いだった。
わたしも当事者という事で呼ばれてる。

あとは、フランクスや彼の上司カインさんなど数名のみがこの部屋に招かれていた。