ローズ様はアスター王子をなにか言いたげに見ていらしたけれども、結局なにも口に出さずに一礼をして侍女とともにこの場を去った。
レスター王子はアルベルト王子の連れて来られた近衛兵に囲まれ、しょんぼりしてる。たぶん兄王子に叱責されてるんだろう。
「なんだか、すごい騒ぎだったね」
やっと解放されて全身から力が抜けてしまったけれども、それでも気は緩めないようにと気合いを入れ直す。
「わがまま王子の相手おつかれ、だな」
トムソンがニヤッと笑うけど、それ聞こえたら不敬になるよ。
「それ、失礼だろ?仮にも王子殿下なんだから」
「別に、あんなの王子とは認めないってみんな言ってる。俺は事実を述べたまでさ。逆に訊くけど、あのわがまま王子の良いところってどこだ?」
「…………………顔………と…………身分?」
トムソンに訊かれて咄嗟には思い出せず、レスター王子の長所を挙げたら……やっぱり少ない。悲しいほどに。
「……見事に内面じゃないな」
「だって……思い出せないからね」
2年間そばにいても個人的に惹かれる要素は見事になかった。無理矢理に強いてあげれば……メンタルや忍耐力が鍛えられるところ?



