【完結】捨てられた男爵令嬢は騎士を目指す2〜従騎士になったら王子殿下がめちゃくちゃ甘いんですが?


「それに、アクアはきっと大丈夫だ。強い馬なんだ。何があったとしても、おまえを残したりしないさ」

アスター王子のその言葉が、今のわたしには胸にしみ通る。肩に置かれた手から彼のぬくもりとともに、暖かな心が伝わってきて…不思議と昂った気持ちが落ち着いてきた。

「はい…ありがとうございます」

そうだ。
アクアは世界一の、わたしの自慢の馬なんだ。
きっと、大丈夫。何があったって、きっと乗り越えてくれる! わたしは彼女を信じよう。


『そう心配することは無さそうだが?』

穴の縁で羽を休めていたブラックドラゴンが、顔を上げて空を仰ぐ。

『近くにある水の魔力を有するものの気配は、弱まるどころかむしろ強まっている。……まばゆいばかりの強い生命力だ』

ブラックドラゴンの掛けてくれた言葉に、心底安堵した。そして、やっぱりアクアの尋常じゃない頑丈さに少し可笑しくなってくる。

『笑ってる場合か、ミリュエールよ。私の感じる気配……ユニコーンに限りなく近いが、似て非なる存在(もの)が産まれそうだぞ?』
「えっ!?」

ブラックドラゴンからの情報に思わずアスター王子を振り返ると、彼も若干眉を寄せて頷いた。

「確かに……ユニコーンに似たような水属性の魔力も感じるが、少し違う。オレが感じる初めての魔力属性だ」
「それは…?一体どのようなものですか!?」

わたしの疑問への答えは、ブラックドラゴンが出してくれた。

『私の知る限りは、ペガサスの気配にも似ている』
「ヒヒヒヒーン!!」

ブラックドラゴンの言葉とほぼ同時に、馬のかん高い嘶きが旧き森の澄んだ空気を震わせた。