【完結】捨てられた男爵令嬢は騎士を目指す2〜従騎士になったら王子殿下がめちゃくちゃ甘いんですが?


反射的に模造剣を抜きそちらへ向けると、その切っ先にいたのはアスター王子だった。

「アスター王子、いつの間にいらしたんですか!?」
『いつの間に、ではないな。少し前にすでに来ていたようだが』

わたしの問いに答えたのはブラックドラゴンで、アスター王子はバツが悪そうな顔をして両手を挙げていた。

「ミリィ、ずいぶん反応が速くなったな。抜刀に関しては上出来だ」
「それはありがとうございます……ですが、いつから聞いてらしたんですか?ちゃんと答えてくださいよ?ことと次第によってはきちんとお返しをせねばなりませんからね」

わたしがにっこり笑いながらプレッシャーをかけると、アスター王子の顔が若干青くなった気がしないでもないけど、それくらい大丈夫でしょう。うん。

それより、わたしは気になっていた疑問点をアスター王子へ訊いた。

「アスター王子、お体は大丈夫なのですか?王宮からここまで相当距離がありましたし、魔力のコントロールがうまくいってない中でしたでしょう?あと、マリア王女とアクアは無事ですか?」
「ああ、その点は大丈夫だ。オレはファルコで移動したし、マリアはメダリオンで追跡したあとはそのままフランクスたちが洞穴で護衛をしている。アクアはここまでオレたちを案内してくれたんだ。
魔力は森に入った途端に安定して、かつてないほどに満ち溢れる感じがする」

その答えは予想できたものではあったけど、すべてがうまくいって肩から力が抜けた気がした。
でも、アクアの様子が気になって仕方ない。

「アクアは?あんな身重の体に相当無理をさせてしまいましたが……」

するとアスター王子の眉がピクリと動いたから、彼女になにか異変があったのだ、と瞬時に察せた。