『それには、私も概ね同意ではある』
ブラックドラゴンの微妙な言い回しに、はて?と首を捻りたくなる。
「概ね…とは?アスター王子はそのままでは国王陛下に相応しくないのですか?」
わたしの問いかけに、彼は当たり前だと言わんばかりの表情(かお)になる。
『忘れたか?悪妻は時として愚王に勝る、ということを』
「……ゼイレームの万妃の話ですか……」
それならば、わたしも知っている。
ゼイレームの歴史上、国が最大の危機に陥った事件だ。
賢王と名高かったステイン王が、田舎で一人の若い女性を見初め妃に迎えた事がきっかけで国が乱れた。
野心家だった妃はあらゆる手管で王を陥落し、権力をほしいままにする。私腹を肥やすことはまだかわいい方で、ライバルの妃を陥れて殺すだけでなく、一族の罪をでっち上げると粛清と称し一族郎党赤子すら全て残らず殺す。自分の意に沿わぬ臣下や管も皆殺し。
贅沢のために課された重税を払えぬ街や村を焼き払う。気に入らない民族を迫害のすえ虐殺。
しまいには気分で軍を出して周囲の国と戦争を始めたくせに、飽きたとすぐ城に戻り放蕩三昧……。軍は孤立し補給もなく悲惨な状態で冬を越し餓死者が続出。
身を持ち崩した王は妃の言う事しか聞かない…流行り病の上に不作で飢饉状態でも、以前より重税を課す……
自らのわがままで周囲の国全てと戦争状態にあるにもかかわらず、放置して享楽にふける王と妃に、さすがに周囲も限界で国を揺さぶるほどの内乱が頻繁に起きた。
ちなみに、その際エストアール家はあくまで王家の盾になる側と、民の側につく側に分かれたみたいだ。



