『迷うことはあるまい。そなたの心は定まったのであろう、ミリュエールよ?』
ブラックドラゴンの問いかけに、わたしは迷いなく「はい」と返事をしたけど。少し可笑しくなってしまった。
『なぜ、私を見て笑う?』
「あなたは龍にしてはずいぶんとお世話焼きなのですね。ドラゴンは人間の事情など意に介さないと思いましたが」
『人の世が平らかであることは、母の望みであった。私はその意思を継ぐゆえに、な。統治者が愚者であれば人の世は乱れる…ひいては、戦乱により他の生命(いのち)にも被害が及ぶ。それを防ぐためにも、統治者たる者は誰でも良いわけではない。人を統べるならば、その資格を問う必要がある』
ブラックドラゴンの言い分はもっともだった。
ゼイレームの歴史を紐解けば、愚者が王だった時代は大抵ろくな事にならない。
周囲が優秀で大事に至らなかったこともあるけれども、それは稀なケースで大抵は周囲の国と軋轢を起こしたり内乱が起きたり…
ゼイレームの領土も最盛期は今より2倍近くの面積があったらしいけれども、50年ほど前にフィアーナ王国とのいざこざで交戦状態となり、北部地区の領地を持った公爵家が裏切りフィアーナ側についてその領土を割譲せざるを得なかった…と。
その戦争だけで、領土の2割を失ったとか。
当時の公爵は王家の血筋を持つ、国王陛下の従兄弟だったらしい。
「確かに、誰でもいいというわけではありませんね。わたしの個人的な思いですが、レスター王子にはとても務まらない。アスター王子の方がよほど国王陛下に相応しいでしょう」



