「は、はははははは…はいぃ!ぼ、ぼぼぼぼ…ボクが剣を自慢するために鞘から抜きましたあああぁ……」
なんとかレスター王子にそう言わせるのに成功。
(というか……弟に庇われたことにすら気づかないって……1年前までは婚約者だったけど。ここまでとは思わなかったな…)
とはいえ、仮にも2年間婚約者だったのならばわたしももっと本気で向き合えばよかったのかもしれないな。強引に婚約させられたとはいえ、一時でも将来を約束した仲だったのだから。
でも、もう。わたしは(たぶん仮だろうけど)アスター王子の婚約者。レスター王子に同情はしてもそれ以上のことはできないし、責任も持てない。
「……だ、そうです。アルベルト兄上。これで問題はありませんね?」
「……おまえがそう言うなら、それ以上追及はできまい」
アスター王子がにっこり笑って念を押すと、肩をすくめたアルベルト王子が苦笑いをされた。お互いに立場もあるけど、信頼があるから成り立つやり取りだ。
狩猟館でのパーティでもあったけど、やっぱりお二方は仲がいい。きょうだいがいないわたしには、ちょっとだけ、羨ましく感じた。
「ローズ・フォン・バーベイン候爵令嬢と、従騎士のトムソン・フォン・ガーランドだね?君たちが見た事実とアスター達の話に相違はあるまいね?」
アルベルト王子が念のための確認をすると、2人ともなぜか顔を見合わせてから、そうだと同時に頷いた。これで、ひとまずこの場でのトラブルは終わったけど。なんだかモヤモヤが胸に残った気がする。



