【完結】捨てられた男爵令嬢は騎士を目指す2〜従騎士になったら王子殿下がめちゃくちゃ甘いんですが?


その想いを認めてしまえば、もやもやした気持ちも楽になった気がする。
胸の辺りで服を握りしめたわたしは、一度深く息を吐いてから勢いよく顔を上げて目の前の龍を見据えた。

「……ブラックドラゴン、どうやらわたしも強欲な人間のようです」
『ほう?逡巡の末に答えを見つけたか』
「はい。わたしはあなたがおっしゃるような、高潔な人間などではありません。きっと、ユリウスには足元にも及ばない…ですが、だからこそそんな自分を認めたいと思います。自分が自分を否定していては、なにも始まりませんから」

そうだ。
自分のなかにある望み……
それはきっと、幻獣にはもっとも嫌われる“欲”というものだ。

そもそも、男爵令嬢のわたしが王子の婚約者になる事自体が異例。通常王位継承権のある王子には、他国からの姫や国内でも侯爵以上の身分の令嬢でなければ認められない。

ましてや、王太子に一番近いと言われるアスター王子だ。20歳になるまで婚約者が居なかったのは、あくまで騎士に専念するため……だったらしいけれども。縁談は引きも切らずと聞いていた。

それが、なにをとち狂ってか、兄に婚約破棄された男爵令嬢…しかも騎士を目指す見習い……を婚約者にしたのだから、案の定国内外から非難や抗議が殺到したらしい。ただ、国王陛下は寛大かつ公平な方だから、独り身を貫いてきた息子がようやく相手を見つけたのだから、と一も二もなく裁可をくだされた。