「これは一体、どうしたことだ?」
ちょうど近衛兵が駆けつけたころに姿を現したのが、レスター王子とアスター王子の異母兄であり、国王陛下のご長子であられる第1王子のアルベルト殿下。
おそらく政務の途中であっただろう王子としての紺色の詰め襟の制服を着用され、柔らかい黒髪ととび色の瞳を持つ柔和な雰囲気を持たれるけど。今はさすがに厳しい顔つきをされてる。
ジニさんが隣で呼吸を乱していたから、たぶん彼女が女官としての機転で王子達の兄を呼んでくださったんだろう。
「レスター、アスター。これはどういう事態なのか、説明してもらおうか?」
「アルベルト兄上」
アスター王子はすぐさま兄王子の目の前で膝をつき、胸に手を当てながら頭を下げて騎士としての正式な謝罪をされた。
「お騒がせしてしまい、申し訳ございませんでした。レスター兄上が自慢の剣を見せてくださるとおっしゃるものですから、刀身を見せるために抜刀された。ただそれだけです…ですよね、レスター兄上?」
アスター王子がそう説明したのに、レスター王子は顔を真っ赤にしながら弟を指さして「ち、違う!コイツが…!」と余計な事を言おうとしたから、わたしがにっこり笑ってレスター王子に釘を差しておいた。
「レスター殿下、まさか誰かを傷つけるために抜刀してないはず、ですよね?ええ。仮にそうしたら、禁中の王宮でどんな罪に問われるか…たしか、昔は拷問の末獄死とかの例もあったような気がしますけどね」
あくまでもレスター王子にだけ聞こえる声量で言い聞かせると、また彼は真っ白になった顔を真っ青にした。面白いほど顔色が変わるなあ。



