『わはははははっ!』
いきなりブラックドラゴンが口を開けて大笑いするから、びっくりした。ドラゴンが笑うなんて初耳だ。
『ミリュエールよ、その高き志(こころざし)や良し!たゆまぬ努力を続け、人の子として己を高めてゆくが良い』
「はい、ありがとうございます。頑張ります!!」
ドラゴンにさえ励まされたわたしは、迷いの霧中から一歩踏み出せた気がした。
(そうだ……迷う時間はない。そんな暇があるならば、もっと自分を鍛え勉強をして吸収すべきだ!)
男女差なんて、あって当たり前だ。だってどう足掻いても、わたしは男性になれない。フランクスたちが女性になれないのと同じに。
同じフィールドで勝負するならば、どうしたって不利になる。それは素直に認めねば、先に進めない。
ならば……
女性騎士として、出来ることを探す。
もちろん、フランクスたちに体力や筋力で追いつく努力はする。それこそ、今まで以上に。
ただ、それ以外の方法を。悔しがってばかりではなく、自分の特性を活かして長所も伸ばすようにすべきだ。
フランクスやトムソンたちだとて、同じ年の男の子でも足が早かったり、木登りが得意だったり、やたら腕力が強かったり……ひとりひとり得手不得手がある。それと同じで、わたしにも合う騎士の形があるはずだ。
『迷いを晴らしたいい眼をしておる……進むが良い、ミリュエールよ。かつて私の母の相棒であった、ユリウス・フォン・エストアールのようにな』
ブラックドラゴンの口からその名前が出て、さらに驚いた。



