【完結】捨てられた男爵令嬢は騎士を目指す2〜従騎士になったら王子殿下がめちゃくちゃ甘いんですが?


ブラックドラゴンがそう告げてくれて驚いたけど、納得がいく結果だった。

本来、幻獣の中でもドラゴンは基本的に人に関わろうとしない。数が少ないという希少性もあるけれども、その知性の高さや高潔さから、欲望まみれの人間を嫌うドラゴンも多い。

人気がある英雄譚では暴れるドラゴンが人々を苦しませ勇者がそれを倒す、というパターンがよくあるけれども、実際ドラゴンが暴れて討伐されるなんて例はめったにない。エストアール家の記録でも、せいぜい数十年や百年に一度あるかないか、だ。

架空の物語では人間同士の戦いよりも、モンスターたるドラゴンを悪役にした方がわかりやすくて好まれるのはわかるけれどね。

「ありがとう、ブラックドラゴン。そうしていただけると助かります」
『構わぬ。それではミリュエールよ、私の背中に乗るがよい。ついでに王宮まで送ろう』
「えっ…?」

耳を疑うブラックドラゴンの言葉に、思わずまじまじと彼の瞳を見てしまった。

「わたしを背中に……良いのですか?」
『そなたならば構わぬ。そなたは私を救おうと、ずっと言の葉で呼びかけ続けた。ドラゴンたる私の誇りを失わぬようにな……大抵の人間は生き物が害となればすぐ排除しようとするが、そなたは私を信じこの旧き地へ導いた。ゆえに、私の背中へ乗せるに相応しき者よ』

ドラゴンは、人と関わらない。姿を見せるーーましてや、触れさせたりなどあり得ないくらいだ。
そのドラゴンがわたしを認めて、さらに騎乗を許すなんて……今まで聞いた事がないけれども、涙が出そうなくらいに嬉しかった。