《久しく珍しき客が来たゆえに、目が醒めた……干渉するつもりは無かったが、そなたの穢れなき願いが我を震わせた》
「穢れなき……願い?」
《私利私欲を捨てた、あくまで他の存在(もの)を思いやるこころ。そなたの中にあるは、他の生命(いのち)への強い慈しみ。祈り本来の、あるべきもの》
神獣と呼ばれたその声は、わたしの事をずいぶんと良く言ってくださるけれども……。
「そんなことはありません!わたしは……まだまだ未熟です。本当ならば自力でどうにかすべきなのに、願うしかない……そんな自分自身が恥ずかしいのです!もっと、もっと……知識を。もっともっと力を得るべきなのに……努力不足が悔しい……」
泣くな、と唇を噛んでも、どうしても目の奥が熱く鼻がツンとなってしまう。
「……だから、アスター王子の危機にも、なんの手助けも出来なかった……助けていただいてばかりで……わたしは足手まといにしかなっていない!わたしは、心身ともに力不足なのです!」
ぽろり、とひと粒だけ涙がこぼれ落ちた。
「大切な人を……危険に晒したくはないのに……」
そのひと言は、自分でも無意識に出た言葉だった。



