それでも、プライドだけは山より高いレスター王子は青い顔で声と体を震わせながら口を開いた。
「な、なにが罪だ!ぼ、ボクは王妃の長子だぞ!ママンはアリュー王家の血も引いてる。お、おまえなんかと比較にならないんだ!」
「だから?」
レスター王子の虚しい言い分を、アスター王子はバッサリ切り捨てる。彼の声が一段と声が低くなった気がしてヒヤリと背筋が冷たく感じた。
「ここはゼイレームですよ、兄上?たとえあなたがアリュー王家の血を引こうと、なんの関係があるのです?…そもそも、ミリィに…私の大切な婚約者に刃を向けたのですから……それ相応の覚悟はおありでしょうね?」
アスター王子の背後からゆらり、と立ち昇るものが見えた。彼は腰に下げた剣の柄に触れながら、一歩一歩兄王子に近づいてく。ひどくゆっくりと歩み寄っているのに、レスター王子は腰を抜かして尻もちをつき、涙さえ流してた。
「ひ……ひいいッ!」
「アスター王子、いけません!」
とにかく必死だった。
後ろからアスター王子の胸の辺りに抱きつき、それ以上進ませまいと踏ん張る。
「ぼくは、大丈夫ですから!あなたまで感情のままに動いてはいけません!!そんなことしたら、またカエルや虫を焼いて食べさせますからね!」
……あ、アスター王子の体がギシッとフリーズした。
どうやら、去年の狩猟会の野営の食事がトラウマになってるらしい。
うん、いいおしおきの方法見つけた!



