【完結】捨てられた男爵令嬢は騎士を目指す2〜従騎士になったら王子殿下がめちゃくちゃ甘いんですが?


手と足がいつもより重い…
でも、ゼイレームやブラックドラゴンを助けるためにも、ここでわたしが踏ん張らねば!

(あと少し…見えてきた!)

昼間でもくっきりと見える、清浄な七色の光。噂話で聞いたことがある、北極圏のオーロラのような輝き。

(ブラックドラゴン、お願いだからこの中へ…!!)

そのためには、わたしが穴へ入らねばならない。
どこまで底が深いかわからないけれども、無謀に飛び込むよりも縁から降りればいいだろう。

「あった!深き穴!!」

幼い頃の記憶どおりに、巨大な陥没穴が見えてきた。半径だけで1km近くある。その穴から絶え間なく虹色の輝きが漏れている。さすがのドラゴンも、この中へ飛び込めば何らかの影響はあるだろう。

「よし…!」

常に携帯しているロープを一番近い木に結び、自分の腰に結びつける。そしてそのまま穴の縁から中へ降りていった。

崖上り訓練をしているから、降りるなんて造作もない。ゆっくりゆっくりと慎重に足場を確かめながら降りていけば、不思議なことが起きた。

(えっ…)

七色の光が濃くなって包み込まれたかと思うと、全身が暖かいものにくるまれたように感じて。なんだか心が安らぐ気がした。

今までの緊張感がほぐされて、落ち着いていく。

それだけでなく、あれほど疲れていたにもかかわらず、しっかり休んで万全の体力が戻ったような力がみなぎる感覚を覚えた。