ならば、とわたしはちょこまかと小刻みな攻撃を加えながら、ゆっくりとゆっくりとドラゴンを誘導していった。
すると、ブラックドラゴンはわたしの意図を理解したように、それに合わせて場所を移して洞穴から遠ざかってゆく。
(……やっぱり!ブラックドラゴンには明確な意志がある。わたしの意図を汲んでいる事が何よりの証だ)
鋭い突きをわたしへ繰り出しても、ぎりぎりのタイミングで避けられるスピードだ。ドラゴンの腕力で全力で突撃されたら、避けられる自信はない。
ドラゴンは、何かを待っている…?
「グアアアオウ!!」
何度か呪縛の干渉が強くなっていたようだけれども、ブラックドラゴンが抵抗していることは火を見るよりも明らか。というか、呪具の縛りが完全じゃない。
(どうしたら…ドラゴンの呪いを解ける?あの呪具を外せばいいのか…)
なんとなくだけれど、ブラックドラゴンが求めているものが見えてきた気がする。
けれど、きっとわたしがあからさまに言葉にして伝えれば、ドラゴンを操る術者に知れてしまう。それだけは避けたい。
ならば、なるべく自然に呪具を外さなければならないけれども…。
魔力がないわたしには方法がわからないし、魔術の知識もない。パグウェル司祭様の講義で知った基礎中の基礎程度だ。
(だけど……ブラックドラゴンは困っているんだ。相手が何であれ、騎士を目指すならば…助ける!)
そう、ブラックドラゴンは助けを求めているんだ。それが今、はっきりとわかった。



