「はああっ!」
立ち上がってすぐ、わたしは次の攻撃に入った。
ブラックドラゴンが翼を羽ばたかせ、その身体が浮く前に弱点を狙う!
上段構えは空きが大きく、時間もかかる。脇構えのままスピードに乗せて剣を突き出すと、予想通りドラゴンの大きな手がそれを阻む。
それを見越していたわたしは逆にその手に飛び乗り、そのまま勢いをつけてジャンプする。
(見えた…!!)
お父様に教えて頂いた、脇腹にあるドラゴンの弱点!
「やあッ!!」
あと少しで届くか、というところでドラゴンの翼に阻まれ、再び跳ね返された。
そして、わたしの着地点に手を使った打撃が来るけれど、すぐに飛び退いて回避した。
次々と打撃を繰り出され、それを避けながら少しずつ 少しずつドラゴンに近づいていく。
ブラックドラゴンの攻撃は派手で一見容赦なく見えるけれども、わたしの中では疑念がだんだんと確信に変わっていった。
(やっぱり……ブラックドラゴンは決して全力で攻撃しては居ない。ここに来てからブレスすら使わないし、わたしのような小さな人間など引き裂いたり踏み潰せば済むだけ。なのに、できるだけ傷つけないように配慮したような手加減をしている……)
もしもブラックドラゴンが本気で理性を失い暴れたならば、いくらアスター王子がいても王宮は壊滅的な被害を受けただろう。死傷者も多数出ていたに違いない。
それなのに、実際怪我人は出てもほとんどが軽症だ。
ブラックドラゴンには、しっかりと意志が残っている…?



